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からめきの瀬の正体(波蝕台)
      温暖化によって削り取られた下総台地の痕跡
 
  柴又土手 江戸川 北総線 国府台 和洋女子大       撮影 堤 昌明  (社)日本ハンググライディング連盟 MPG教員
 
       柴又船着場から                          正面 柴又船着場 金町浄水場 金町JR南口高層ビル

  葛飾は「昔海だった」といわれています。しかし、海だったのは縄文時代の前期から弥生時代という限られた
時代で、それ以前の旧石器時代は陸地でした。旧石器時代の地球環境は、温暖化とは逆の寒冷期もしくは氷河
期と呼ばれる寒い時代で、今から2〜3万年前には海水面が現在よりも100メートルも下がっていたといわれて
います。
  縄文時代が始まる1万2千年前頃には、地球環境は寒冷から温暖へと変化し、徐々に気温が上昇して次第に
海水面をあげていきました。この縄文時代の海水面の上昇が、まさに危惧される温暖化と同じ現象なのです。
  縄文時代に起こった海水面の上昇の痕跡を今でも観察することができます。江戸川の柴又付近には引き潮の
時に河床に岩盤が露呈することがあります。この岩盤は「からめきの瀬」とも呼ばれるもので、地質的には波蝕台
ととらえられるものです。縄文時代の温暖化による海水面の上昇によって、海が内陸に入り込む過程で、下総台
地の西端が波によって台地表層のローム層を削り取ってしまった結果、その下の固い岩盤だけが残ったのです。
  江戸時代に書かれた『嘉陵紀行』の「らめきの瀬」の項には、「古、この所に石船沈て、水底に石ある
ゆへ、水棹にさはりて、がらがらと音をするをもて、名付と云」と記しています。しかし、
「からめき
の瀬」の正体は、石船が沈んだ石ではなく、温暖化による海水面の上昇によって削り取られた下総台地
の痕跡なのです。
 「からめきの瀬」は、縄文時代の温暖化が起こる前に、葛飾の柴又辺りまで下総台地が張り出していた名残で
あり、地球の環境問題を考える上でも重要な資料といえるのです。
                                             (解説)    学芸員  谷口  榮 

   柴又エコロジー2000 http://www.vheart.ne.jp



以下 2枚目のパネル

      からめきの瀬を渡る
                            江戸川の柴又船着場付近

              北総線の先は市川市                                                 矢切の渡し
             
                  自主生き物調査団メンバー 初めて渡る                                波蝕台

 
 葛飾区史によれば、からめきの瀬が記述されている史書としては、「関八洲古戦録」に、「国府台は
、北西の切岸高く険なれども、東南はなだらかにして、陰より廻りて敵の後ろより不意をおそい相図を
以って大手搦め手より攻め立てなば、勝利疑いあるべからずとて、葛西筋より市川の川上、からめき
の瀬を渡して、真間国府台の東西へ押し着けたり」と、
 また、国府台合戦物語、小田原勢葛西に着陣
の事、の件に
  「巳に小田原の評定終えて、正月六日未の刻計りに、先陣ひづめを飛ばせて人馬不休
うつままに、先陣は七日の巳の刻斗りに、下総の葛西、芝又、からめきの向こうに付にけり、後陣は大
将氏康、武州六郷の川をわたり、品川大森に陣を取り、凡そ其の勢三千余駒とぞ聞ける、先陣の中よ
りも遠山富永は先をかけんと、利根川辺、芝又より三小岩、篠崎迄陣取り、明くる八日利根川を渡らん
ことをはかりける。 巳に房州軍勢北条方葛西に着と聞き、かの川を打ち立て、先陣は国府台栗山矢
喰にささえたり、正木大善軍者第一の武者なれば栗山立てだしへ廻り立ち並べたるかわら人形のかげ
より、からめき芝又を見渡せば、諸軍勢残らずみちみちたり」、とあります。
   この国府台合戦物語は、合戦のあった永禄7年から約150年後、江戸の宝永年間(1700年頃)
に国府台付近に居住した人が、土地の古老の伝承をもとに、合戦を物語風に書いたもので、作者不詳
ということであります。つまり、直接的な合戦当時の記録ではないので、史実はどうであったか議論の
残るところですが、物語が書かれた1700年当時、江戸川にからめきの瀬と呼ばれる浅瀬があったこ
とは、事実であろうと思います。               (引用文許可有)


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